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私達のクラスでは、どんな儀式を行ってもまともにオカルトな現象が起きることはなかった。恐らくは、誰も霊感が強かったり、霊に取り憑かれやすい体質の人間がいなかったということなのだろう。
つまり、霊能力者、に該当する人間はいなかったということ。
その言葉通りなら、つくるさま、が降りてきても――誰もその存在を認知できなかったということではないだろうか。
「あの儀式、成功してたかもしれないってこと?」
『してたんだと思う。でも、誰もつくるさまが見えなかったし、その言葉を聞けなかった。……あの儀式ってさ、つくるさま、のお願いごとを無視すると呪われるっていうものだったみたいなんだよね。……誰もつくるさまの姿が見えなくて声が聞こえなくても、つくるさまは降りてきていた。つくるさまにとっては、召喚者に無視されたも同然だった。……神様でも悪霊でもあやかしでも、怒るのが普通だと思わない?』
「お、怒るって、まさか」
『あそこにいた一人に取り憑いて、自分の願いを叶えさせようとしてるんじゃないかってこと。……わたし、萌がそれに取り憑かれてた可能性もあるんじゃないかって、ちょっと思ってて』
混乱してきた。まさか、亜侑美は。
「亜侑美。ひょっとしてあんた、萌が私に宗教勧誘したのも……その神様のお願いを叶えようとした結果だったとか、そう言いたいかんじ?」
ややきつい口調になってしまった。彼女は暗い声で、そうかもしれない、と告げた。
『願いを叶えて貰ったら、その願いに巻き込まれた別のクラスメートに取り憑くってことを、繰り返す。……きっと萌は、そのなんとかの儀式、をやることで呪いを諒子に移そうとしたんじゃなかなって』
「嘘でしょ」
『嘘じゃないよ、諒子ちゃん』
ああ。あの時、萌の連絡を無視していたら良かったのか。
否。私が亜侑美としょっちゅう連絡を取り合っている時点で、どっちみち逃げられなかったとしか思えないが。
『酷いよ。諒子ちゃんのせいで、私に呪いが来ちゃったんじゃない。……この呪いは、誰かが死ぬまで続くんだよ。クラスの全員で、永遠に、押し付け合うしかない。わたしは、死にたくないの、だから』
じわり、と背中が重くなった。冷たい汗が流れ始める。誰かの突き刺すような視線を感じる。電話の向こうと、それから私の背後から。
『だから、諒子ちゃん引き受けて。わたしはつくるさまの望み通り……ちゃんとつくるさまの話を、諒子ちゃんにしたんだから』
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