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”確かにそうだ。シノが死んだ、とはまだ決まっていない。墜落してしまったけど、脱出しているかもしれないんだ……”
しかし、巧也の言うことに従うのは、彼女には大きな抵抗があった。
小隊のリーダーは、自分なのだ。本来なら自分が指示を出すべきなのに、3番機の巧也の指示に従うのは、彼女のプライドが許さなかった。
だけど……
”悔しいが、タクの言うとおりだ。シノがもし助けを求めているのなら、それをすべきなのは、ペアを組んでいる私だ。彼女を守り切れなかった責任もある”
「……了解」
振り絞るような声で応え、絵里香は翼をひるがえす。
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「はあっ……はあっ……」
汗が目に入り、沁みる。しかしHMDを跳ね上げるわけにはいかない。巧也は荒い息のまま、前方を見すえる。
最後に残った一機は、強敵だった。武器を使い果たした譲が囮となって敵を引き付けるのだが、いざ巧也が攻撃しようとすると、すぐに逃げ出してしまう。
もう燃料も残り少ない。巧也の焦りは頂点に達していた。
『こうなったら……最後の手段か……』譲だった。『タク、後は頼んだぜ』
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