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しかし、譲の機体は敵の鼻先をかすめただけだった。
「!?」
”ジョーのヤツ、体当たりに失敗したのか……?”
どちらにしても、巧也はほっとする。
『今だ、タク! 早く撃て!』譲が叫ぶ。
「ええっ?」
敵機に戻した巧也の両目が、大きく見開かれる。敵機の排気ノズルから、黒煙が吐き出されていたのだ。
”……そうか!”
ようやく巧也は譲の意図を理解する。彼は決して体当たりを失敗したわけではなかった。彼の真の目的は、敵の前方を超音速で通り過ぎて衝撃波を浴びせることで、敵機のエンジンに入るはずの空気を吹き飛ばし、エンジンを止めてしまうことだったのだ。しかし、一歩間違えば本当に体当たりになってしまう、あまりにも危険な戦法だった。
エンジンが止まってしまったら、もはや戦闘機は手足をもがれたようなものだ。しかし、まごまごしていたら敵もエンジンを再起動してしまう。巧也は確実に敵をロックオンする。
「タク、フォックス・スリー」
3秒後。
巧也が発射した2発の機関砲弾が、敵機を直撃した。
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