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「右エンジン、点火」
アイが告げると同時に、タービンの回転音が一気に高まっていく。エンジンが始動したのだ。
「……やった!」
片方のエンジンだけでも始動すれば、とりあえず飛行は可能だ。しのぶは大きくため息をつく。
「右エンジン、始動完了。現在高度、千二百メートル。引き起こしを開始してください」と、アイ。
「了解」しのぶは操縦桿を一気に引く。Gメーターの数値が跳ね上がり、6Gに。しかし、しのぶは全く平気だった。
機体が水平になったところで、しのぶは操縦桿を戻す。
「そのまま速度を維持してください。続いて、左エンジン始動します」
「了解」
アイに応えて、しのぶは速度計に視線を移す。時速六百二十キロメートル。エンジンが片方だけ機能している状態……片肺飛行は、彼女もDFで何度か経験がある。左右のエンジンの推力のバランスが取れていないので、ラダーで当て舵しないとまっすぐ飛ばないのだ。
「左エンジン始動完了。これで通常通りの飛行は可能です。発電機も通常回転していますから、電気系統も最小モードから通常モードに復帰します。無線とデータリンク、レーダー等が使用可能です」
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