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 アイが言うミニマムモードとは、操縦系統だけに電力を使うモードだ。エンジンには発電機が付いているのだが、フレームアウトしてラムエアでただ回っているだけのエンジンでは、発電能力も低くなる。だから、無線やレーダーなどを使用停止にして、操縦に必須な部分だけに電力を集中する必要があるのだった。 「ありがとう、アイ……」本当によくできたAIだ。しのぶは心から「彼女」に感謝する。 「どういたしまして。シノをお守りするのが、私のミッションですから」  アイの口調が、しのぶには心なしか得意そうに聞こえた。  その時だった。 『シノ? 大丈夫なの? シノ?』  無線から、切羽詰まったような絵里香の声。 「うん。大丈夫だよ、エリー」  そうしのぶが応えると、なぜか返答が来ない。 「エリー、どうしたの?」 『……ううっ……シノ……良かった……シノが生きてて……良かったよぉ……』  絵里香はすっかり涙声になっていた。 「え、エリー……泣かないでよ……なんか、わたしも……泣いちゃいそう……ぐすっ……」  そう言った時には既に、しのぶの目にも涙があふれていた。 %%%
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