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「そうだったのか……ほんと、君が無事で良かったよ」
巧也が言うと、しのぶが嬉しそうに応える。
『ありがとう、タク……』
帯広上空、三千メートル。行きと同じように、四機は編隊を組んで基地を目指していた。しのぶの機体がダメージを受けたので、大事を取って酸素マスクなしでも問題ないくらいの高度を選んだのだった。
『だけど、この機体ってえらく頑丈なんだな』譲だった。『ミサイルが直撃しても飛び続けることができるなんて……』
『そうだね……わたしも、びっくりした……でも、なんていうんだろ……わたしたちって、なんだかすごく、守られている気がするよ……』
しのぶのその言葉には、巧也も譲も完全に同感だった。
「だけど……いつも完璧に守ってくれる、というわけでもないと思う。何にだって限界というものはある。それを越えてしまったら、おそらく無事にはすまない。だから、過信は禁物だと思うよ」
言いながら巧也は、「基地に帰投する」と宣言して以来、絵里香が一言も発していないことが気になっていた。しのぶが無事だったことが分かった時に大泣きしていたのがみんなにバレて、恥ずかしいのだろうか。でも、割とクールな印象を与えていた絵里香の意外な一面を見ることができて、彼は少し嬉しかった。
しかし。
間もなく自分が大いに打ちひしがれることになるとは、この時の巧也は思いもしていなかった。
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