12人が本棚に入れています
本棚に追加
”ちくしょう。まんまとやられたぜ。もう1機いたとはな。今度はサシで勝負しようぜ。じゃあな、"Tak" ”
「やっぱ、”ジョー”だったんだ……」
嬉しかった。ランキング一ケタの相手になんか、なかなか勝てるものじゃない。”タク”の顔に笑みがこぼれる。
” CU,Joe”
短く返答した”タク”の視界に、チャット画面の脇の時計が入る。その瞬間、彼の顔に浮かんでいた笑みが消える。
”ヤバい。約束の時間を少し過ぎてしまった……”
「ごめん、もう時間だ。オチないと……それじゃ”ノブ”、またな」
「うん。楽しかったよ、”タク”。また『空』でね」
”ノブ”の応答を合図に、”タク”はログアウトを選択。目の前が暗くなる。
「……ふぅ」
息をつきながら、”タク”こと中島 巧也はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭から外す。この瞬間、彼はバーチャル戦闘機パイロットから本来の立場である男子中学生へと戻ったのだ。彼を待つ次なるミッションは、明日までにやらなくてはならない学校の宿題だった。
---
巧也
最初のコメントを投稿しよう!