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「最近といっても人間で言えば30年は相当の期間だぞ。
そろそろ口直しをしたらどうだ?
いつも言ってるように、ヴァンパイア好きの美人はいくらでもいる。
『抱いてくれるなら血などいくらでも差し出す』と皆が皆口にしてることも知ってるだろ?
どうしても男に拘るというなら、伴侶にしたくなるほどの才色備えた美少年を調達してや、、、」
「断る。
先天的ヴァンパイアである俺の伴侶は朱雀院が決める。
自死の幇助にしても本人からの強い要望があってのことで本意ではなかった。
主に対し申し開きできない間喰などごめんだ」
「けどな、この先朱雀院がどれだけの期間ゴッドフィーダーとして一族に君臨するかわからないんだぞ。
活力としての血も摂らず、ただ仕えて生きるだけでは楽しみもない上に身体にも障るだろ」
「、、、、」
ちらりと視線を寄越し、ここぞとばかり勧誘する男を止めるには、黙してわずかに笑みを湛えるのが一番なのだが、今夜の愷流は、
「俺にも抱く相手を選ぶ権利はあるからな。
今日のところはセックス抜きで血を分けてやるよ。
先日現役の若手モデルを抱いたばかりだ、旨いぞ」
やけにしつこく食い下がり、再び車を停めると織呀の逞しい身体を乱暴に引き寄せ自らの顔を傾けた。
月灯りに反射し、青白くも長い牙が伸びる。
「お前は朱雀院の寵愛を受けた者。
たとえ飢えても主のものに手を付ける気はない」
片手で遮り睨んではみるが、朱雀院が在している限り、織呀は手出しができない。
この男はそれを知ってるだけに性質が悪かった。
黒髪を持つ、という点で二人は同じであったが半世紀前に朱雀院より人間からヴァンパイア化された愷流の両こめかみには、一筋ほどの銀髪が混じっていた。
それは一族の長が資質を認め仲間として迎え入れた証である。
暴力にしろ性交にしろ迂闊に手を出せば裏切り以外の何物でもないと織呀は自身の肝に命じていた。
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