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「わ、、、わたくし、知ってます。
奥様と墓地の方へ散歩に出た時、目の前に突然男が現れました」
「男? どのような男だ?」
「は、白銀の長い髪で、、、
ですが、わたくしはすぐに気を失ってしまい、それしか覚えてません。
目が覚めたとき奥様はわたくしの横で遠くを見るような目をして茫然と立ち尽くしていらっしゃいました。
首からは血が、、、」
「何故すぐご主人様に報告をしなかったのです?」
「今起こったことは誰にも話さないようにと
奥様からきつく止められたのです。
彼は誰も傷つけたりはしなかったから、と」
医師は天を仰ぎ、大きく息をついた。
「白銀だ。
、、、この子はヴァンパイアシヴァールの血を継いでしまったに違いない」
「シヴァール、、、それは一体、、、」
「我々人間と共生できる一派のことだ。
クラウス夫妻の子ならば皆賢く美しい。
特にこの子はシヴァールの長となる資質があった為に奴らに選ばれてしまった」
「共生ですって?
人間がヴァンパイアと共生なんかできるものですか」
「君たちが知らないのも無理はない。
古来より、まことしやかな恐ろしい噂ばかりが独り歩きして人々をいたずらに脅かしてきたのだからな。
だが実のところ吸血族には二派あり、人間を襲うのは黒銀と呼ばれるごく少数のヴァンパイアだけなのだ。
もちろんこの子は、、、」
そう言って医師が視線を落とした時、子供の目が開いた ───
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