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それから更に数百年の時を経た日本───
織呀と愷流の二人が、彼らの主である 朱雀院に呼び出されたのは満月の潤む夜、地上には這うように霞のかかった2月の初旬だった。
───
毎夜行われる夜会への出席は任意であったので余程のことがない限り二人が顔を出すことはなく、
今夜のように一族の長から突然招集される理由があるとすればそれはかなり重要な用件だろうと思われ、助手席に座る織呀はいくつかの理由を考えるともなく考えていた。
朱雀院にとって極身近な者である次期ゴッドフィーダー(いずれヴァンパイア界の長となるもの)である自分とその側近である 愷流を呼びつけたと言うことは、、、
「いよいよ娶るのかも知れないな」
同様の考えを口にした男の横で織呀は微かに頷いて見せた。
ここでの『娶り』とは人間をヴァンパイア化させ、永遠の伴侶にすることを言う。
つまり朱雀院に見初められた生身の人間が適齢期を迎え仲間に入れられるのだ。
であれば今日の夜会は上層部のみを招いた事前の披露目かも知れない。
さもなければ、、、
─ 仲間の誰かが事故、或いは故意によって塵化されたなど、不慮の報告である。
どちらにせよ行けば判るだろうと、二人は念のため正装に身を包み、急ぎ邸宅を後にした。
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