第3章 君たちがクソザコだってわからせてあげる!

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 ベンチ外のメンバーとしてスタンドから戦況を見守った武志。胸を張ってマウンドに立つ大は勇壮そのもので、それはそれは頼もしく見えたものである。  どうやったらあんなに堂々とプレーできるのだろうかと、羨ましく思ったくらいだったのだ。しかし、裏ではそんな葛藤があったとは知らなかった。  夏の大会の真相を話してくれた大は、照れくさそうに鼻の頭を掻いていた。そのあと、大は一瞬の間を置いてから表情に精悍さを取り戻し、引き続き武志に檄を飛ばす。 「自分でも出来ることを精一杯やってくれれば、案外なんとかなるもんだ。暴投すんのが嫌なんだろ? だったら、ワンバウンドで投げればいいじゃん。捕る方が届かないくらい高めに暴投したらどうしようもないけど、低い球ならなんとかできるから。――やったんだろ? ワンバウンドのボール回し」  大に言われて、武志は『あっ』と声が出た。あやめにやらされた、ある一つの練習メニューを思い出した。  『ノーバウンド送球禁止のボール回し』。ボール回しと言えば内野のダイヤモンドを使ったキャッチボールの練習であるが、あやめはそこに『必ず1回以上はボールを地面にバウンドさせる』という縛りを設けた。  地面に弾ませなければならないとなれば、投げ方もだいぶ変わってくる。武志も含め、最初は誰もがその違いに戸惑った。だが、下半身を活かした強いワンバウンドが投げられるようになってくると、送球、捕球が滞りなく行われるようになった。送球を高めに浮かせる心配もなく、多少アバウトなコントロールでも暴投のリスクが低くなるという利点もあった。
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