第5章 高校野球の中心は私たちって、わからせてあげる!

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 和波の投球練習が終わった。声援を背中に受けながら、武志が小走りでバッターボックスへ向かう。不思議と緊張はない。『不安から緊張は来る』とあやめは言った。この打席で何をすべきかを理解しているからこそ、不安なくここまで来られた。  二、三回素振りを終えて、右打席に足を踏み入れる。まだ誰も立ち入ってない、まっさらなバッターボックス。しっかりと整備された土は、なんとも言えない心地よさを武志に与えた。 「よっしゃ来いやあぁぁぁ!!!!」  バットの切っ先を投手に向けて、思い切り叫んだ武志。球場中の視線が自分に集まるのが心地いい。もっと自分を見てほしい。自分にしかできないバッティングを、みんなに見てほしい。  審判が右の人差し指を前方に突き出し、試合開始を宣告する。両チーム、そして観衆の歓声がいっそう大きくなる。様々な声が入り乱れる球場内は雑多なハーモニーで一気に満ちた。  西大三バッテリーのサイン交換は一発で済んだ。淀みないリズムで、和波が両手を大きく振りかぶる。  身体全体を連動させるというより、腕っぷしを活かして力任せに投げてくるスタイル。担ぎ上げて投げ下ろす、まるで背負い投げのようなフォームで第1球を投げ込んでくる。
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