エリスティナの婚約者

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エリスティナの婚約者

「——あ……あなたって、女性皆んなになの?」 「そんな感じ、とは?」 「だからっ……その……そうやって、すぐ頬に触れてくるところ、とか……」 エリスティナはやっぱり戸惑ってしまう。なのにリヒトガルドは涼しい顔をしながら、少しだけ首を傾げて見せた。 「私だから、許すけれどっ。身分の高い女性に勝手に触れたりしたら、即刻打ち首にだってなりかねないわよ?!」 「勿論皆んなにという訳ではないが。目の前の女性に礼を尽くすのは、当然の事ではないか?」 (——わっ、私を押し倒しておいてっ。その口が言いますか?!) 目を丸くしたエリスティナを見遣りながら、リヒトガルドは頬を緩ませ、心の中で呟く。 小さな事でも気になって、手を差し伸べてしまう。 君はわたしの、大切な人だから——。 * 久しぶりに日差しを見せた窓辺から舞い込む風が、白いレースのカーテンを大きく揺らした。 リヒトガルドの青い双眸を見上げていれば——自分はこの光を知っているような気がしてくる。 「その髪色っ……あなたはもしかして、グルジアの人?」 自国の名が出たのに驚き、リヒトガルドは息を詰まらせた。
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