266人が本棚に入れています
本棚に追加
エリスティナの婚約者
「——あ……あなたって、女性皆んなにそんな感じなの?」
「そんな感じ、とは?」
「だからっ……その……そうやって、すぐ頬に触れてくるところ、とか……」
エリスティナはやっぱり戸惑ってしまう。なのにリヒトガルドは涼しい顔をしながら、少しだけ首を傾げて見せた。
「私だから、許すけれどっ。身分の高い女性に勝手に触れたりしたら、即刻打ち首にだってなりかねないわよ?!」
「勿論皆んなにという訳ではないが。目の前の女性に礼を尽くすのは、当然の事ではないか?」
(——わっ、私を押し倒しておいてっ。その口が言いますか?!)
目を丸くしたエリスティナを見遣りながら、リヒトガルドは頬を緩ませ、心の中で呟く。
小さな事でも気になって、手を差し伸べてしまう。
君はわたしの、大切な人だから——。
*
久しぶりに日差しを見せた窓辺から舞い込む風が、白いレースのカーテンを大きく揺らした。
リヒトガルドの青い双眸を見上げていれば——自分はこの光を知っているような気がしてくる。
「その髪色っ……あなたはもしかして、グルジアの人?」
自国の名が出たのに驚き、リヒトガルドは息を詰まらせた。
最初のコメントを投稿しよう!