エリスティナの婚約者

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「それにあなたの瞳、ブルーグリーン。グルジアの海の色……」 「青い目を持つ者など、どこにでも居るだろう?」 「あなたと同じ色の瞳を、私、知っているの——グルジア国のひとよ。私の、婚約者……」 エリスティナの頬が微かに紅く染まる。 胸の上にそっと重ね合わせる手のひら、もじもじと照れたようにうつむく様子は、これまでリヒトガルドに向けてきた剣幕とは対照的にひどく儚く愛らしい。 「もしもあなたがグルジアの人なら、きっとのことを知っているわ。だって彼は、グルジアの……」 「——グルジアの王太子、リヒトガルド」 つい口を突いて出てしまった言葉に後悔する。 婚約者の名を言い当てられたエリスティナは、驚いて顔を上げた。 「そうよ……リヒトガルド様っ。やっぱりあなたはグルジア国の?!『リヒト』だなんて珍しい名前、に似ていると思ったの」 エリスティナは(すが)るように詰め寄った。 「ねぇ、あの方は……リヒトガルド様は、元気にされている?!お父様がご崩御なさったのよね……さぞかしお力落としでしょう。私もそばにいて、支えて差し上げたいけれど……今は、それができないから」 美しい瞳を心配そうに揺らして見上げてくるエリスティナに、リヒトガルドは呆気に取られ、言葉を失ってしまう。 視線を落とし、まだ濡れたままの前髪を掻き上げてみたが、込み上げてくる想いを押さえきれずにフッと微笑んだ。 「君は優しいのだな……。王太子は健在だ。君が案じてくれたことを知れば、とても喜ぶだろう」 できる事ならば、自身を案じて瞳を潤ませる彼の婚約者——エリスティナを、今ここで抱きしめたかった。 「あなたは、リヒトガルド様のことをどのくらい知っているの?あなたが平民じゃない事くらいはわかるわ。私たちの婚約の事を知っていたほどだから、もしかして……王宮に仕えていたり、する?」
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