エリスティナの婚約者

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キラキラと輝く瞳は、リヒトガルドの返事への期待でいっぱい。 聞きたい、そして王太子の事をもっとよく知りたい。そんな気持ちが表情に溢れ出ている。そしてリヒトガルドは、その期待を裏切る事ができないのだった。 「ああ、良く知っている」 ——今ここで素性を明かせば、どうなるだろうか。 そんな想いが、刹那の間にリヒトガルドの頭を掠めた。 「わたしは、王太子の……」 素性を明かせば、きっとひどく落胆させてしまうだろう。 エリスティナ——。 君は『わたし』ではなく、空想の中に存在する『婚約者リヒトガルド』に、想いを寄せているのだから。 「王太子の……従兄弟(いとこ)で、王宮では近衛騎士だ」 「あの方の、従兄弟……?どうりで瞳の色が似ているわけねっ」 咄嗟についてしまった『嘘』、そして『偽りの名前』。 真実を伝える時が来たら、エリスティナをまた怒らせてしまうだろう。 想いを寄せていた婚約者の正体が、呪詛がかりの無礼な男だったという大きな落胆とともに。 「そういえば今日、皇城にグルジア国の大使が訪ねて来るのですって。縁談の事でお父様に大切なお話があるのだとか。王太子様に近い方なら、あなたのお顔見知りかもしれないわね?」 唐突に知らされた事実に、リヒトガルドの目が大きく見開かれた。 誰だ……。グルジアはいったい、誰を寄越すのだ。 是が非でもその者に会って、この理不尽な状況を知らせねばならない。 自らも知る必要がある、そして確かめたい。 王太子である自分が姿を消した今、祖国グルジアがいるのか——。
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