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広告代理店営業 28歳
「この企画書、明日までね!」
「〇〇物産のCM提案、アポイント取った?」
「大型プロジェクトのメンバーに△△商事の会長に着任していただく話は…」
「明日の新聞広告現行、校了もらった?プルーフ(見本刷り)の時間ある?」
「この素材差し替えだって!今すぐ」
ガチャン、と乱暴に電話の受話器を置く。
「ふー…」
CMの差し替え素材がギリギリ間に合って、一息つく。
しかし、そうできるのもつかの間。
すぐに新しい問題が飛び込んでくる。
「詩織さーん!今日納品のノベルティ、手配ミスで来週になっちゃう
て…!」
直属の後輩である真野が泣きながら走ってくる。
「はい?なんで来週なの」
「5営業日って言われたので、てっきり今日かと思ってOKしちゃんたんです…」
土日も含んだ「5日」だと思ったわけか。
「…先方は?」
「キャンペーン間に合わないって、怒ってて…」
そりゃそうだ。
キャンペーンに合わせてノベルティを発注しているんだから。
詩織は彼女が握っている伝票を「貸して」と奪い取り、発注業者に連絡をした。
「そこをなんとか…、納期を早められませんか?」
『そんなこと急に言われてもねぇ。こっちはちゃんと事前に5営業日かかるって伝えて発注もらってるんだから』
「おっしゃることはごもっともです。今後も御社に受注しますから、今回だけなんとかご協力いただけないですか?」
『近藤ちゃんのお願いだから、できれば聞いてあげたいんだけど、物理的に難しいんだよね』
そりゃそうだ。
あと2日かかるものを今日もってこい、という方が理不尽だ。
詩織は丁重に謝罪と御礼を伝えて電話を切った。
「納期のミスに気づいたのはいつ?」
こうなってはクライアントに謝罪するしか無い。
今日中じゃリカバリーはきかない。
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