広告代理店営業 28歳

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「……昨日、です」 「そしたら、その時言ってくれないと」 昨日だったら、もう少し対処の方法もあっただろうに。 「…今日になったら、なんとかなってないかなーって思って…」 なるわけ無いだろ。 詩織は大きく溜息をついた。 謝罪は時間との戦いだ。 今回は完全にこちらの不手際。 経緯を説明して誠心誠意謝って来ないと行けない。 「今から行くよ」 「え、どこにですか」 「クライアントのところ」 「私もですか…?」 怒られたくないのか、もじもじ指を動かしながら詩織の顔色を伺う。 何を言っているんだろう。 自分の失敗は上司がなんとかしてくれるとでも思っているんだろうか。 「……これは、誰のせい?」 「わ、私ですけど…、詩織さんもちゃんと見てくれてたら…」 「あなた何年目?」 「2年目です…」 「いつになったら人のせいにしなくなるの?」 詩織はもう一度息をついた。 育て方なのか、その人の性格なのか、もうわからない。 しかし今はそんなことを考えている暇は無い。 「とにかく、早く行くよ」 「え、えー」 詩織はジャケットを羽織、真野の腕を掴んだ。 「近藤さん!このプレゼン、どうするんですか!」 遠くで1つ下の川口が不安そうに叫んでいる。 この後3時から大事なプロジェクトのコンペがある。 最悪、川口が行ってくれればいいのに。 詩織は大きく息を吸った。 「30分で戻ってくるから!」 そう言い捨てて、いやいやついてくる真野を引っ張って会社を出た。
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