広告代理店営業 28歳

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「この度は弊社の不出来際による納品ミス、大変申し訳ございませんでした!」 クライアントの応接室いっぱいに響き渡る声で頭を下げた。 隣で真野も同じように慌てて頭を下げる。 おろしたばかりのクリーム色のパンプスが目に入る。 これをおろしたときは、良い方向に物事を運んでほしいと願ったが、最初からその願いは聞き入れられなかったようだ。 急いできたせいで、あちこちにぶつけてすでに傷だらけだ。 「本当に困りましたよ…。お願いした納品日に納品していただければいいだけのことなのに」 担当者とその上席のおじさんは椅子に座ったまま息をついた。 「キャンペーンに合わせたいって言いましたよね?」 「もうすでに色々告知しているのに、それをずらすことなんて出来ませんよ」 詩織はその言葉を聞きながら、スカートをギュッと握った。 「おっしゃることはごもっともです。御社のせっかくのキャンペーンを台無しにしてしまいました。この責任はすべて上席の私にあります。本当に申し訳ございませんでした」 隣の真野はあれから何も言わない。 ただ頭を下げてこの時間が過ぎ去るのを待っている。 きっと詩織がどうにかしてくれると思っているのだ。 彼女はその様子を見て、一瞬冷静になってしまった。 クライアントが何かを言っているが何も聞こえない。 後輩ができないのは自分のせい。 自分の仕事が回らないのも自分のせい。 先輩になったら、後輩の面倒を見ながら、自分の仕事の効率化を考えて、うまく回していかなければいけない。 ……年次が上がって仕事が増えたのに? 後輩がやる仕事は一言一句見てあげる?赤ちゃんじゃないのに? 教え方が悪い?教育者じゃないのに? 後輩の尻拭い?自分が悪いと思っていないのに?
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