広告代理店営業 28歳

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詩織はふと顔を上げた。 まだクライアントはこちらに向かって何かを言っていた。 そう。 すべて自分が悪い。 …………なんて、思えるか。 詩織はクライアントの言葉を遮って口を開いた。 「この度は申し訳ございませんでした。すべて私の責任です。なので、私の代わりにこの子がなんとかします」 「「えぇ?!」」 詩織は無表情のまま淡々と述べて真野を差し出すと、くるりと踵を返して応接室を出た。 「ちょっ…!詩織さん…!」 後ろから真野の焦る声が聞こえたが、もう無理だった。 これ以上頭を下げたら私の精神がすり減る。 そう思って、捨てた。 そのままクライアントの会社を出る。 車を置いたままずんずん歩いて未知に出る。 脇目も振らず一心不乱に突き進んだ。 こんなことしたら、クライアントからの契約は切られ、会社は損害。 会社からはクビを宣告されるだろう。 詩織は首からかけられた社員証を眺めた。 そうだとしても、もう無理だ。 しばらく歩いていると、隣町に行く橋の上まで来ていた。 新しいパンプスは乱暴に歩いたせいでさっきよりも傷だらけだ。 自分が頑張った証もこうやってすぐボロボロになる。 行く宛も無いことに気づいた詩織はゆっくり歩みを止めた。
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