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サイトウさんと別れて家に帰り、
なんかモヤモヤしたままだったので、
学校の近くの駄菓子屋に行くと、
トウキとウチダさんを見つけた。
さっそくさっきサイトウさんに聞いたこと、
昨日の本屋さんで会ったお兄さんのことを相談してみる。
「アキラくん、それ神様かもしれない。」
なんか嬉しそうにウチダさんが言った。
「いや、普通のお兄さんだったよ?」
「神様もいっぱいいるから、普通の人っぽい神様もいるのよ。」
「そうなの?」
「らしいよ。長いこと使ってるモノなんかも神様になるんだって。お父さんが言ってた。」
「うそくせー。」
アイスを食べ終わったトウキが口を挟む。
「でもウチダさんの家って神社でしょ。プロが言ってるからなぁ。
プロのお墨付きだとなぁ。」
「お墨付きってなに?」
「昔超すごい物にはタコかイカの神様が墨を吐いて
免許書みたいなの発行してたみたいよ。」
「そうなの?」
「知らない。」
ついテキトーに言ってしまった。
「テキトーいうなよ。」
「なによ、トウキくんはアキラくんのこと信じないの?」
「アキラのことは信じてるよ。ウチダの言う本の神様ってのが
信じられないんだよ。」
「でも白くて静かな声だったんでしょ?
でもサイトウさんはお兄さんなんていないって言ってたんでしょ?
それじゃサイトウさんがウソついてることになるじゃない。」
「うーん。」
なんとなくだけど、サイトウさんはボクとちがって
そんなしょーもないウソをつかないと思う。
いや、つくかもしれないけど、
好きな本のことを早口に喋っちゃう人が
あんなに自然にウソをつくとは思えなかった。
「サイトウさんがウソついてないとしたら、なんなんだろ。」
「お父さん?」
「サイトウさんのお父さんなら見たことあるよ。」
サイトウさんのお父さんはあのお兄さんよりもっとおじさんだったし、
もっと色黒だったし、もっとムキムキでマッチョだった。
「サイトウのお父さん、陸上の選手だったらしいよ。
すげームキムキだった。」
「まじで!?足速いのかな?」
「なんだっけ、なんか投げる競技の選手だったって。」
「本?」
「本投げる競技の人は本屋さんになれないよ。
いや、本投げる競技はないだろうけど。」
「サイトウさんのお父さんのことはいいから、
その白い男の人はなんだったかって話よ。」
「幽霊とか?」
「幽霊はちがう。」
ウチダさんがすぐに否定した。
「なんで?」
「幽霊は怖いからちがう。」
「ウチダさん幽霊苦手なの?」
「苦手じゃないけどキライ。それにアキラくん、
そのお兄さん怖かった?」
「優しかった。」
「ほら幽霊じゃないじゃん神様じゃん。」
「神様か幽霊か二つのうちのどっちかなの?」
いくら考えてもあのお兄さんが神様や幽霊だとは思えない。
いや、トウキにぴったりの本を見つけてくれたから神様なのかな?
それともサイトウさんの本屋さんの従業員を名乗ってる
ただのすごい本が好きなお客さんなんだろうか?
「よし、じゃあサイトウん家行って確かめようぜ!」
トウキならそう言うと思った。
考えるよりも行動してみる。ボクには中々出来ない、
トウキのすごいところだ。
「うーん、あのお兄さんがまた居るかどうかわからないけど、行ってみる?」
「行こう行こう。本の神様見てみたい。」
「ウチダが勝手に神様扱いしてるだけじゃん。」
「でも昨日のことだからなぁ。今日もいるかなぁ。」
三人ともやることもないし、約束もなかったし、
とりあえずサイトウ書店に行くことになった。
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