銀河鉄道の本屋のススメ

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 サイトウさんの部屋に三人ともお邪魔して、 お茶とカステラを出してもらった。 「お姉さんごめんなさい。お兄さんかと思ってました。」 「いや、謝るのはこちらだよ。ぼくだなんて一人称を使えば 勘違いしてもしかたないからね。」 白いお姉さん……レジにいたお姉さんじゃない、 サイトウさんのもう一人のお姉さん、オオカさんは やっぱり優しい声だった。 「ごめんねタムラくん、言われたときすぐに気付かなくて。 家に帰ってからひょっとしたらオオカお姉ちゃんのことかもって 気づいたの。」 「ううん、大丈夫だよ。」 「でもサイトウさんのお姉さん色白でスラッとしててすごい美人。  美少年っぽくて綺麗。」 神様じゃなくてガッカリしたかと思ったけど、 ウチダさんはサイトウさんのお姉さんが綺麗なことに びっくりしてる。 「ありがとう。なぜか舞台でも男役をやらされることが多くてね。」 「役者さんなんですか?」 「そんな大層なもんじゃないよ。友達同士で集まって、  ちょっと劇をやってるだけさ。」 「でも本の神様じゃなかったのは残念だったなー。」 トウキはそう言ってたけど、あんまり残念そうに見えないから、 どっちでもよかったんだろうな。 「ふふふ、お兄さんなんていないから神様か幽霊か。  素晴らしい発想と想像力だよ。」 「オオカお姉ちゃんは店番でもないのにお店に出てフラフラしすぎなのよ、 役作りだからって男の子みたいな格好してるし、 アキラくんだって間違うわよ。」 「ははは、ごめんごめん。」 「あ、昨日は本をすすめてくれてありがとうございました。  銀河鉄道の夜、トウキも気に入ってくれたみたいです。」 そういえば昨日のお礼を言ってなかったので、 改めてお姉さんにお礼を言った。 「まだちょっとしか読んでないけど、  表紙と主人公が授業中に居眠りしてるとこがいいな。  オレは居眠りはしないけど喋っててよく先生に怒られるから。」 「ジョバンニは遊んでるだけのクワハラとちがって働いて  病気のお母さんの看病もしてるのよ。」 「あ、そのへんまでは読んだ。それ以上は言わないで。」 「銀河鉄道の夜の話できそうだな。トウキが読むまでは  ネタバレになるから喋れないけど。」 「オレがいつ読み終わるかわかんないけどさ、  読み終わったらみんなで話しようぜ。  がんばってはやく読むから。」 「自分のペースで読んだ方がいいよ。無理に早く読むと  楽しくなくなるかもだから。」 「そうか、だから夏休みギリギリに読書感想文で本を読むと  全然面白くないんだな。」 「宿題じゃないからゆっくり読んで、読み終わったら  話しよう。ウチダさんとサイトウさんも来てよ。  二人も本に詳しそうだし。」 「お、いいねー。アタシの読書力、クワハラに見せてあげるよ。」 「私もいいの?」 「うん。サイトウさんすごい銀河鉄道の夜好きそうだし詳しそうだし。」 「ありがとう。」  そのあとはトウキとボクとウチダさんの好きな漫画の話をして、 サイトウさんも結構漫画も好きだって話になって、 ずっと漫画の話をしてたら夕方になったので お姉さん二人にお礼を言って帰った。 神様でも幽霊でもなかったけど、 本の話を楽しくできたから あれはサイトウさんのお姉さんだったけど、 やっぱり本の神様がサイトウ書店にはいるような気がする。
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