隣の家

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隣の家

「ッ……ぃでぇ⁉」  跳ね起きれば、眼前にあった本の背表紙に顔面を強打した。 「ッぃ……てぇ……」 「いきなり起きるからだ、龍神君」 「竜助です!」  本が退くと、今度は先輩の顔があった。 「えっ……えぇ⁉」 「ちょっ……危ないだろう?」  再度跳ね起きれば、膝枕をしてくれていた先輩が呆れ顔で俺を見た後、本を鞄に入れて、縁側から立ち上がった。  雨が、止んでいた。  雨音や雷鳴の代わりに、蝉の大合唱が辺りに響いている。 「あまり長居をすると、誰かに通報されかねない。その子も君にきちんと憑いたようだし、帰るぞ」 「その子……あっ、リュウ!」  見渡せば、そこは無造作に生えた草木に覆われていた庭。  俺が住んでいた頃の面影は、すっかり消え失せていた。 「あれ……? さっきまで……」 「いつまで思い出の中にいるのだ? 行くぞ」 「あっ、ちょっと! 先輩!」  外に誰もいないことを確認し、俺達はさっと外に出て門を閉めた。  と、同時に、隣からかかる声がある。 「君達、そこは今誰も住んじゃあいないよ」 「えっ? あ、すみません!」  俺が反射的に謝り、声のする方を向くと、丁度隣の家から出てきた年配の男性と目が合った。
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