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「君はそういう類に好かれやすい体質だ。諦めるんだな、龍神君」
「竜助です! てか、なんですか? そういう類って」
読んでいた雑誌を閉じ、先輩は俺と流貴がいる方を交互に見た。
「前も言ったが、私には流貴の姿は見えない。今は眼鏡が飛んでいるから分かるがね。恐らく、君のお父様もそうだろう。その子は、君以外に姿を見せる気はないようだ」
それから、幼い子の視線を合わせるようにして屈んだ彼女は、「流貴君、眼鏡をそろそろ返してください」と流貴がかけている眼鏡を取った。
流貴が小さな手をばたつかせる。
『あぁ! 気に入っていたのにぃ』
「申し訳ないが、これはあげらない」
『なぁ竜助、わしにもせっちゃんと同じのを買うておくれよぉ』
流貴は、先輩のことを『せっちゃん』と呼ぶようになった。
仲良く話しているようにも思えるのだが、その声も先輩には聞こえていないらしい。
「分かった分かった。後で買ってやるから」
『わぁい! 竜助、だぁいすき!』
胸に飛び込んでくる流貴に、一瞬身構えた。
(またあのでかい龍の姿で突進してくるんじゃ……)
あれはトラウマだ。
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