どん底に落ちた執事暮らし

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彩乃の言う通り、食事の後にケーキが出てきた。苺がたっぷり乗ったケーキにはろうそくが灯されていて、岬はふぅと息を吹きかけ、その火を消した。 「岬くんには一番苺の載ったところをあげるわ」 そう言って彩乃が包丁を手に取った。 「あ、ぼ、僕が……」 「いいの、やらせて。岬くんの誕生日ですもの」 微笑んで言う彩乃は本当に岬の誕生日を祝ってくれているらしかった。少し大きめにカットされたケーキを皿にのせて岬に渡してくれる。岬が皿を受け取り、勧められるままに苺と生クリームをフォークに載せ口に運ぶと、その様子を嬉しそうに彩乃が見ていて、なんだか不思議な気持ちになった。 「美味しい?」 「あ……、はい……」 岬が返事をすると、彩乃は一層嬉しそうにした。 「本当? 良かったわ。実はそのケーキ、私が料理長に教えてもらいながら作ったのよ」 えっ。 岬のフォークを持つ手が止まる。 「岬くんのお誕生日を、どうしてもお祝いしたかったの」 そう言う彩乃の表情に、裏があるとは思えなくて。 「あ……、ありがとうございます……」 岬は何とか、お礼だけ言った。
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