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「マル……。あいつどうしたんだろうな?」
夜。寝床に戻って来たマルたちを代わる代わる抱き上げて話し掛ける。勿論、夕食の時のことだ。彩乃は小さい頃に岬の下僕にされたのを仕返ししようとして強引に執事にと雇ったのではなかったのか? それを、誕生日を祝うとか、どうかしてる……。
「あっ、これは懐柔策だったりする? 手懐けておいて、あとでこっぴどく懲らしめてやろうとか、そう言うことか?」
思いつくと、そうとしか思えない。何せ岬が王様だった子供の頃には、下僕たちに随分横柄に接していたと思うから。
「でも、お父様もお爺様も、長谷川だって、他の子供の上に立たなきゃ駄目だって言ってたし、俺は悪いことしてないよな?」
抱き上げたマルが、ニャア、と鳴いた。きっと「そうだよ」と言ってくれている。だから、悪いことはしていない。あの時は周りの子供と立場が違い過ぎたのだ。
「よし。明日からも、俺はいくら頭を下げても、心は屈しないぞ。プライドを持って生きるんだ」
幸い、学校に行ってしまえば屋敷のことは忘れられる。それが、ずっと続くんだと思っていた。
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