プロローグ

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プロローグ

思い返すのは子供の頃。裕福だったあの頃、年頭ともなれば祖父と父が経営する会社の取引企業や子会社の社長たちが、祖父や父に頭をぺこぺこ下げて、祖父や父のご機嫌を窺っていた。岬(みさき)はそんなパーティーで社長子息としてパーティーにデビューし、岬の周りには祖父たちに頭を下げる大人たちの子供があてがわれていた。どの子供も、岬の機嫌を損ねるようなことはしない。岬くん、岬くん、と言ってあとをついて回ってきていて、それが気分良かった。 野球グラウンドが二つくらい取れそうな庭で鬼ごっこをしていた時、庭の隅にある物置小屋に一人の子供を見つけた。さっき、皆で鬼ごっこをするぞ、と宣言したにもかかわらず、その子供は物置小屋の隅っこで隠れることもしないで何かを見ている。 (……僕の言うことを聞かない、変な奴) ずり、ずり、と膝で歩くその後ろ姿に、おい、と話し掛けると、その子供はくるっと岬の方を向き直ると、しっ! と口に指を立てた。庭掃除に使っていた道具にまみれて其処にうずくまっていた子供――女の子だった――は、視線を小屋の奥に戻す。まるで岬に興味を持たないその女の子に、岬は憤慨した。
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