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一吹君は行く度に、祖父母と一緒に仙台駅まで迎えに来てくれた。
私が東京へ帰る日には毎回、目にいっぱいの涙を溜めて手を振って別れる。
「真夏、手紙を書くから!」
「私も手紙を書くし、電話もする!」
中学生に上がっても、儀式の様に続いた。
少し変わったのは仙台駅に着くと、
「真夏、待ってたよ。」
そう言って手を繋ぐと、胸がドキドキし始める事。
自分が一吹君に恋をしていると自覚するのに、時間は掛からなかった。
一吹君の部屋で過ごす時間が、だんだんと増えていった時、
「真夏、好きだ。」
切長の瞳が真剣に私を見つめ、手をそっと握って言った。
一吹君の手に若干の震えを感じる。
「私も…。」
「私も?」
「好き。」
彼は私の頬を優しく撫でて、優しく問いかける。
「ねぇ、キスしていい?」
「う…ん。」
私達は引き寄せられるように、初めてのキスをした。
触れるだけの優しいキス。
このまま、ずっと2人で居られたらいいのにと、願わずにいられないほどに恋焦がれた。
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