第12話 嫌われ令嬢は結婚する

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第12話 嫌われ令嬢は結婚する

 7年戦争はプロイセン包囲網が功を奏し、持久戦によるプロイセンの全面降伏を目前にしていたが、1762年1月5日、ロシアのエリザヴェータ女帝崩御によるピョートルⅢ世の即位に伴い、戦況が大変化を遂げた。  ピョートルⅢ世はプロイセンのフリードリヒⅡ世の崇拝者であり、ロシアが最終的に戦争そのものから離脱したからだ。  その後、帝国は敗戦した。  残念な結果に終わったものの、戦争が終わったことで私の仕事の方は一段落して落ち着きを見せていた。  そんなある日の夜。  カウニッツ様が私の部屋を訪れた。 「殿下。戦争という非常時のため、これまで申し上げることを(はばか)っていたことがございます」 「はい。なんでしょうか?」 「実は殿下のことをずっとお慕い申し上げておりました。つきましては、婚姻をご了承いただきたく…」 「へっ!」  私は、ちっとも進展を見せない二人の関係に半ば諦めかけていたのだが、急な申し出に驚いて間抜けな声を出してしまった。  そして唖然としている私の目から涙がポロリと零れ落ちた。 「もちろんです。喜んで」  私は、そう答えるとカウニッツ様の胸に飛び込んだ。  嬉しさに次々と涙が零れ落ちてきて、私はカウニッツ様の胸で嗚咽(おえつ)した。  翌日。  二人そろってマリア・テレジアの部屋を訪れた。  二人そろった姿を見てマリア・テレジアは言った。 「皆まで言うな。二人は結婚したいというのであろう? そのような見え透いたことを今更言うまでもない」 「お母さま…それでは…」 「これまで帝国に著しく貢献してきた二人のめでたき門出だ。誰が(はばか)ることがあろうか」 「「ありがとうございます」」     ◆  結婚により、公私ともに充実した私は、次なる大仕事を画策していた。  スクレ・ドゥ・ロワという秘密外交や情報収集を行うフランスの秘密機関に倣い、皇帝の秘密機関を創設し、対仏政治工作を行うことで、フランス革命をソフトランディングさせられないかと考えたのだ。  もし、それが上手くいけば、いずれフランス王妃となるマリア・アントーニアの命も救えるかもしれない…  だが、これは史実で起こったことを改変する大仕事だ。  覚悟して取り掛からねば…  こうして、私の公私ともに多忙な日々は続くのであった。
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