傘を差す少女

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僕の名前は『涼晴(りょうせい)』、東京の大学に通う男子で大学3年生だ。 僕は夏休みで実家の静岡県富士宮市に帰省しているが、父は僕が高校生の時に病気で天国に旅立ったため、実家には母と高校2年生の妹の『晴音(はるね)』がいる。 僕が実家に帰ると晴音が、最近富士山の朝霧高原で不思議な噂があることを教えてくれた。 その噂というのは、夏の夕刻に夕立が降ると朝霧高原の根原バス停に、傘を差した制服姿の少女が立っているという話だ。 その少女は、そのバス停にバスが停車しても乗車せずに立ち尽くしているという。 僕はその噂の真相を確かめたいと思って、ある日の夕方実家の車を使って朝霧高原の根原バス停に行ってみた。 でも、この日は晴天のためかバス停には誰もいなかった。 その後も気になって天気予報を注視して、雨の予報の時には朝霧高原の根原バス停に行ってみようと思っていた。 そんなある日、天気予報で静岡県東部で夕立が発生する可能性があるという予報があって、僕は再び朝霧高原の根原バス停に行ってみることにした。 僕は富士宮市街から朝霧高原に向かって車を走らせたけれど、根原バス停に到着したら減速してバス停に誰もいないことを確かめながら、バス停を10m程通りすぎた場所で車を左に寄せて一時停止した。 僕はバックミラーと車の左側のドアミラーから根原バス停の様子を伺っていた。 時刻は17時30分を過ぎていた。 18時を過ぎると辺りが薄暗くなってきて、車の窓に雨がポツリポツリと当たってきた。 そしてその雨は、10分もしないうちにザーっと勢い良く降り始めた。 ふと僕が車の左側のドアミラーを見ると、制服を着た少女が傘を差して立っていることに気が付いた。 その少女は、いったいどこから来たのか、僕は気づくことができなかった。 少しするとバス停にバスが停まって乗降するドアが開いたけれど、その少女はバスに乗り込むことはなく、バスはドアを閉めて発車し僕の車の横を通り過ぎて行った。 僕は少女の様子を車の左側のドアミラーから注視していたけれど、その少女はバス停に立ち尽くしていた。 僕は思い切って、その少女に話しかけてみようと思い、車を降りて傘を差して少女に近づいていった。 僕が近づいていっても、少女はうつ向いて少し下の方向を見つめたまま立ち尽くしていた。
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