ディナー

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「…中で少しお話しましょうか」  意外にも受け入れてもらうことが出来た。葵さんは俺をダイニングへ案内した。艶やかな黒髪、身体にフィットしたワンピース、そこから覗く白い脚、そして何より微かに感じる葵さんの匂い。俺は直ぐにでも押し倒したい気持ちだった。 「坂本さんはもう夕食は済みましたか?」 「えっと、まだです」 「じゃあ一緒に食べながらお話しましょうか」  そう言うと葵さんはキッチンへ行き料理を作り始めた。俺は正直葵さんに追い返されると思っていた。何故なら俺はこれから自分の務める高校の教頭の奥さんに手を出そうとしているのだ。  緒方教頭は物静かであまり目立たない人だ。ずっと独身だったし、既に五十を過ぎており皆このままずっと独身だろうと思っていた。それが突然結婚するということになった。  式も披露宴もなかったし、俺はしばらく奥さんがどんな人か全く知らなかった。噂では教頭よりもずっと若い綺麗な奥さんだと聞いていたが若いといっても四十くらいのそこそこの美人なんだろうと思っていた。
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