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「俺たちの親が離婚など許すわけがないだろう」
「互いの幸せを願っての離婚です。今後は友人として良き関係を築いていくことにすれば、誰も文句は言わないはずです。それに、いつまでも親の言う通りにしていては、マザコンやファザコンなどと勘違いされてしまいますよ?」
「なに」
「冗談です」
ふふっ、と馬鹿にしたように軽く笑みをもらす。
そのような私を見て不服に思ったのか、鋭い目つきを向けてきた。
「ですが望まない結婚というのは事実でしょう」
怖気つくことは絶対にしない。
何事も最初が肝心で、弱い女だと思われたら終わりである。
見下されるくらいなら、強気な自分を嫌われる方が良い。むしろ嫌われた方が好都合である。
「まさか二人で話すのが二度目にして、お前の化けの皮が剥がれるとは」
「貴方はすでに一度目で化けの皮が剥がれていたではありませんか」
相手の舐めきった態度に苛立ちを覚える。
相手がもう少しまともな人間であれば、私だって好きになろうと努力したはずだ。
けれど相手は性悪で、自己中心的で、私の気持ちなど一切考えていない。
そんな人に対して、いつまでも良い顔をできるとは到底思えなかった。
「可愛気のある女なら抱いてやろうと思ったんだけどな、残念だ」
「それは良かったです、貴方のような人に身を捧げるなど死んでも御免ですから」
夜景を一望できるガラス張りの大きな窓近くに設置されている一人掛けソファに座り、白の丸テーブルを挟んで向かい合う私たちの間に不穏な空気が流れていた。
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