397人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
*
私の政略結婚相手の名は漣郁也。
歳は私と七つも上の二十七歳。
見た者は硬派な印象を植え付けさせるような混じり気のない黒い髪に黒い瞳が特徴的。
凛々しく整えられた眉に、くっきりとした二重で切れ長の目は何とも言えぬ圧を感じた。
彼には眉目秀麗という言葉がまさに似合ってはいるが、もちろん良いのは外見だけである。
政略結婚という、互いに望まない形で結婚をしたというのに、私に気遣う言葉一つない。
むしろ私を愛することはないなど、余計なことばかり言ってくる。
別に私は彼からの愛が欲しいなど思っていないというのに。
「ん……」
時刻は午前五時、常夜灯とカーテンの隙間からわずかな外の光で照らされている部屋でスマホのアラーム音が響く。
薄らと目を開けてスマホのアラームを消し、眠たい目を擦りながらゆっくりと上体を起こした。
郁也さんと結婚して早二週間。
今日も私は一人で使っている広々としたダブルベッドの上で起床した。
十月上旬の朝は肌寒く、薄手の上着を羽織ってベッドから降りる。
部屋の中心に設置されている大きなダブルベッドで眠る習慣は、まだ慣れそうにない。
私一人が使っている二階の寝室を後にして、一階のリビングへと目指し階段を降りる。
最初のコメントを投稿しよう!