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インターホンを鳴らすと、「はい」と、森緒君の声がスピーカーから聴こえてきた。
「笹野です。羽風君はいますか?」
「僕だよ。夏菜子、上がって」
森緒君の家は、来訪者とのやりとりが録画に残るようになっているらしい。来たことがわかるように残しておこうと言ったのは彼だ。夏菜子と呼ぶのも、私たちの親しさをアピールする為だ。
家の中に入ると、森緒君はもう、制服から私服に着替えていた。彼に促されるまま二階へと上がっていく。フリとはいえ、これからすることを考えるとなんとも落ち着かない。
「笹野さん。もしかして緊張しているの。そわそわしているみたいだけど。ここに座っていいよ」
森緒君は先にベッドに腰掛けると、隣をポンポンと叩いた。
「そうじゃないけど。手順を確認しておこうと思って」
「いいよ、そんなの。僕が適当にリードする」
一応私にも心の準備ってものがあるんだよ。森緒君。ドキドキしていることを、悟られるわけにはいかないんだから。
「じゃあ、そうしてもらう」
どうってことないという風に返事をして、隣に座ってみることにした。実際は、頭の中で心臓が鐘のように鳴り響いている。
「キスからね。少し練習しておかないと、それらしく見えないかもしれないし」
「それもそうだね」
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