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飛び入りセッション【二年前】
トランペットケース片手に、一つ目の重い扉を開けると、店内の音楽が聞こえてくる。次の扉を押し開くと一気に空気が変わる。
LazyBirdの匂いだ。外界から切り離されたような真四角のライブハウスは、僕を安心させる。ここは僕のホームだから。
「あれ、葉くんお帰りなさい。もう留学から帰ってきたの?」
カウンターから声を掛けてくれたのは楓さんだ。
「一時的に帰省しているだけですよ。まだあと一年か二年くらいは、向こうにいる予定です。今日はセッションだと予定表に載っていたんですけど、今って誰がホストプレイヤーをやっているんですか」
「えっとね、今日はベースが茅野さん。茅野さんはわかるよね。あとのふたりは、まだ大学三年とかの子だから、葉くんは知らないと思う。もう少ししたら来ると思うから、紹介しようか」
「はい。お願いします」
知り合いがいたことに、僕はホッとした。
茅野さんは、プロにはならず、仕事をしながらジャズをずっと続けているセミプロで、面倒見がいい奴だからとマスターが紹介してくれた人だ。
彼はマスターの言う通り面倒見のいい人で、まだジャズを始めたばかりの僕を、大学の練習場に連れて行ってくれたり、バンドのフロントとして使ってくれたりした。お陰で色んな人と知り合いになれて演奏場所が増えていったから、僕にとっては恩人とも言える人だ。若干酒が入ると、しつこいところがあるけど。
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