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「でも今日来るなんて、葉くんついてるね」
僕を指さしながら、楓さんは言う。
「どうしてですか」
「ベーシストの園原さんが今帰国中らしくて、マスターに会いに来るってさっき電話があったんだよね」
「え、園原さんって、あの園原佑一さんですか!」
一気にテンションが上がった。ニューヨークでも一度ライブを見たことがある。日本人で初めて大手レーベルと契約した園原さんは、今も第一線で活躍している、僕の憧れのプレイヤーだ。
その園原さんのバンドに早川先生がいたことも、僕は気に入らない。バンド自体の活動が今どうなっているのか知らないけど、本当にことごとく先生は僕の欲しいものを持っている。
「そう。少し遅くなるかもしれないと言っていたけど、セッション中に来たら、もしかしたら一曲くらい参加してくれるんじゃない?」
「うわ、緊張してきたな。楓さん、園原さんのことを僕に紹介してもらえないですか」
「うーん。私はそんなに親しいわけじゃないから。紹介してもらえるかはわからないけど、マスターに言っておいてあげる」
「ありがとうございます!」
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