飛び入りセッション【二年前】

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✳ 「葉くん! 園原さんもうすぐ着くって」  トントンと強く肩を叩かれ、僕は顔を上げた。いつの間にか、カウンターに突っ伏して眠っていたらしい。 「お水でも飲んで酔いを醒ました方がいいんじゃない?」  コトンと音がして、目の前に水の入ったコップが置かれた。 「あ、すみません……」 「よく眠れるね。こんなにうるさいのに」  楓さんは目を擦る僕を見て、呆れたように笑っている。 「お酒、飲みすぎたんじゃないの」 「二杯しか飲んでいないですよ」 「葉くん、お酒弱いんだ」 「そうでも無いと思うんですけど。園原さんが来ると思ったら、緊張したのか酔いが回るのが早くて」 「それはわかるなあ。昔、早川さんがまだ学生の頃、店を閉めたあとに、マスターと早川さんのセッションに混ぜてもらったことがあるんだけど、もうめちゃくちゃ緊張して、ボロボロだったんだよね。ふたりして面白がっている感じで、恥ずかしかったな。まあいい経験にはなったけど」  懐かしそうに遠い目をして楓さんは言う。 「え。楓さんって、楽器をやっていたんですか」 「知らなかった? テナーサックス。最近吹く暇がなかなかないから、ヘッタクソになっているけどね」 「へえ。テナーですか」 「以外?」 「いや、そうでもないかな。他の楽器だとしたら、ドラムとか似合いそうですけど」 「ドラムは残念ながら、まったく叩けないな。あ、来た来た!」
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