飛び入りセッション【二年前】

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 ほらというように、楓さんは顎で入口の方を指す。  楓さんの顎の先の延長線上に目を向けると、ウッドベースの大きなケースを抱えた園原佑一さんが入ってくるところだった。  目立つなあ。  派手なわけではないけど、身につけている服や靴も明らかに上等なものだし、それをサラッと着こなすスタイルの良さからしても、一般人には見えない。 「やっぱりかっこいいですね。園原さんは」 「葉くんもそんなこと思うんだ」 「男から見ても、かっこいい人だと思いますよ。楓さんは思わないんですか?」 「かっこいいというのは理解できるけど、整いすぎた人って、ちょっと苦手なんだよね。早川さんとかもそうだけど。気後れするというか」 「ふーん。じゃあ僕はどうですか?」  僕をまじまじと見てから、楓さんは、「うんうん。かっこいい。かっこいい」と半笑いで言う。 「笑っちゃっているじゃないですか」 「だって、大学生は年が下過ぎて、そういう目で普段見ないから。たしかに葉くんモテそうだ。かっこいいと思うよ」  完全に恋愛対象外というふうに楓さんは僕のことを見ているらしい。  僕と楓さんだと、先生と花名くらい年齢差があるんだろうか。 「年齢差って気になるもんですか」 「そりゃあそうでしょ。こっちが良くても、向こうが良いとは限らないんだから」  ぼやくように楓さんは言った。
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