飛び入りセッション【二年前】

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「向こうって誰のことですか」  楓さんは明らかにうろたえる顔をした癖に、「ただの例えだってば」と苦しげな誤魔化し方をする。 「絶対例えなんかじゃないですよね。どんな人だろうな。楓さんが好きそうな人って」 「ちょっと! 周りに聞こえるじゃない」  きょろきょろしながら、人差し指を立てて、楓さんは怖い顔をする。 「へえ。楓さん、ここに好きな人がいるんだ。今日はセッションの日だし、ミュージシャンってことですよね。それで、学生は対象外と。卒業していればいいんですか?」 「、ただの例えだってば」 「いいじゃないですか。隠さなくても」 「私も葉くんの好きな人なんて知らないんだから、フェアじゃないでしょ」  多分そう言ったら引きさがると思ったんだろう。楓さんは僕が飲み終えたカクテルのグラスを下げて、カウンターから離れようとした。 「僕? 別に隠していないですしいいですよ。早川先生の彼女です。僕にとっては、高校と大学の同級生ですけど」
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