飛び入りセッション【二年前】

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 流しにグラスを置いた楓さんが、パッと顔を上げた。 「え? それって……、花名さんっていう子?」 「あれ、会ったことあるんですか」 「一度ふたりでデュオの練習をしに来ていたからね。カフェで演奏依頼があるから、舞台慣れさせたいと早川さんが言って。私は挨拶くらいしかしたことないけど、すっごい歌が上手い綺麗な子だよね。大学って、ボストンで一緒なの?」  日本にいた頃にも、演奏依頼なんて引き受けていたんだ。  僕とは絶対にデュオはしないと言う癖に、先生とはしたんだと思うと、なんか腹立たしくなってくる。 「ええ」 「もしかして葉くん、その子と付き合っているとか? あれでも、早川さんの彼女だってさっき」  楓さんは僕が先生から奪ったとでも勘違いしているのか、困惑した表情をしている。 「そうだって言いたいところですけど、僕はずっと友達ポジションですね」 「そっか……」
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