88人が本棚に入れています
本棚に追加
流しにグラスを置いた楓さんが、パッと顔を上げた。
「え? それって……、花名さんっていう子?」
「あれ、会ったことあるんですか」
「一度ふたりでデュオの練習をしに来ていたからね。カフェで演奏依頼があるから、舞台慣れさせたいと早川さんが言って。私は挨拶くらいしかしたことないけど、すっごい歌が上手い綺麗な子だよね。大学って、ボストンで一緒なの?」
日本にいた頃にも、演奏依頼なんて引き受けていたんだ。
僕とは絶対にデュオはしないと言う癖に、先生とはしたんだと思うと、なんか腹立たしくなってくる。
「ええ」
「もしかして葉くん、その子と付き合っているとか? あれでも、早川さんの彼女だってさっき」
楓さんは僕が先生から奪ったとでも勘違いしているのか、困惑した表情をしている。
「そうだって言いたいところですけど、僕はずっと友達ポジションですね」
「そっか……」
最初のコメントを投稿しよう!