88人が本棚に入れています
本棚に追加
「恋愛対象外ですか……。そういうのって、入らない人は一生入らないのか、何かのきっかけに変わることもあるのか、どっちなんですかね」
「何かのきっかけね。きっかけなんて、もうとっくの昔に逃していそう」
楓さんはそう言いながら、肩を竦めている。
僕はどうなんだろう。花名が先生と自然消滅するのを待っていれば、そういうチャンスも巡ってくるんだろうか。
先生に裏切られてあんなに泣いていた時でさえ、僕の手を取ってくれなかった花名だ。今、本気で気持ちをぶつければ、もう二度と会わないと言われるのは目に見えているんだよな。
まだもう少し、あと少しと僕はこの恋の期限を延長し続けている。延ばしたところで、見込みなんてなさそうなのに。
「葉!」
マスターが軽く手を挙げて、僕の名前を呼んだ。マスターの隣に立っている園原さんが少し首を伸ばして僕の方を見ている。
「あ、紹介してくれるんじゃない? 行ってきなよ」
「あ、はい」
最初のコメントを投稿しよう!