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「どうですかね。ただの友人だとは思っていないと思いますよ。他に仲のいい奴もいないし。でもどのくらい本気にとってくれているのかはわからないな。彼女、本気だと言ったら多分もう喋ってもくれなくなるので、僕がはぐらかし続けているせいもありますけど」
花名は友人としての僕を嫌ってはいないんだと思う。以前よりも頼ってくれるようにはなったし、学内でなら隣にいても、そんなに嫌な顔をされることもなくなった。時折笑ってくれることもあるし、彼女から話しかけてくれることも増えたと思う。
だけどそれは、友人としてだ。僕を好きなわけじゃない。
「私はちょっと花名さんもズルいなと思っちゃうけど。少なくとも葉くんが好意的なのはわかっているわけでしょ。気持ちがないのなら、気を持たすのはどうなのかなって」
楓さんは肩を竦めながら言った。
「彼女の寂しさを利用して、先生との恋を応援している友人として無理やり傍にいるのは僕の方だから。彼女の傍にいられさえすればいいと思う気持ちもあるんですよ。なんだかんだ言って、一番傍にいるのは僕だし……なんて思ったりもして。そうは言っても花名の気持ちが少しも僕にないというのは、彼女の様子を見ていれば明白なんです。傍にいればいるほど辛いなと思う時間も増えてきて。正直、自分の気持ちを持てあましていますよ」
「なるほどね。眠れないほど辛いのに、葉くんは好きなのをやめられないんだ。見た目によらず一途だね。葉くんのことを好きになって、一緒に寝てくれる女の子を探す方が健全な気がするけど。……それができるなら、私の部屋なんかで愚痴ってないか」
クスリと笑いながら、楓さんはまたウイスキーに口をつけた。
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