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「……葉くんなら、私じゃなくたって他にもっといい人が」
「いないですよ。僕、手あたり次第こんなこと言ったりしないし、誰でもいいわけじゃないんで。僕なら、楓さんの気持ちは多分わかってあげられるし、付き合ったからって、マスターのことを諦めさせたりしないですよ。そもそもあまり日本にいないので、会いたいとかごねたりもしないですし」
「そんなセールスポイントみたいなこと言われても困るってば」
「本当に困っています? じゃあ本当に嫌だったら、ぶっ叩いてください。やり返したりしないんで」
僕はそう言って楓さんの手を思いっきり引き寄せ、唇が触れそうな距離まで近づいた。
大きく見開かれた瞳はすぐに見えなくなった。僕が彼女の唇を塞いでしまったから。
楓さんはウイスキーの味がした。美味しいのか不味いのかわからない味だけど、触れ合った唇は優しくて僕の脳を酔わせるには十分だった。
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