ジャズストリート

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ジャズストリート

 マスターから電話を受けたのは、大阪に向かう車の中だった。  みんなが一斉に笑った声で、マスターの声がかき消されてしまい、僕は慌てて耳を塞ぎ、窓の方を向いてスマートフォンを耳に密着させた。 「マスター、すみません。なんて言いました?」 「騒がしいな。お前どこにいるんだって言ったんだ」 「今、ジャズストリートに出るバンドメンバーで大阪まで移動中なんです」 「あー、茅野もなんかそんなこと言ってたな。高槻であるやつだろ」 「そうです。茅野さんも一緒で」 「じゃあ、今日LazyBirdに来るのは無理だよなあ」 「僕は明後日も出演するバンドがあって、今日はちょっと」 「お前ついてないなあ」  電話の向こう側で、マスターが唸るような声を出した。 「佑一から、お前が店に来られるか訊いてくれないかと言われたんだ。多分仕事の話じゃないかと思ったんだけどな。無理なら仕方ないよなあ」 「佑一さんってまさか!」 「前会っただろ。園原佑一だよ」 「明後日なら終わったらすぐに新幹線で帰ります!」 「それがなあ。なんか色々予定があるらしくて、今日の夜しか無理らしいんだ。予定が合わなければ諦めると言っていたから、まあそう伝えておくわ」
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