88人が本棚に入れています
本棚に追加
ジャズストリート
マスターから電話を受けたのは、大阪に向かう車の中だった。
みんなが一斉に笑った声で、マスターの声がかき消されてしまい、僕は慌てて耳を塞ぎ、窓の方を向いてスマートフォンを耳に密着させた。
「マスター、すみません。なんて言いました?」
「騒がしいな。お前どこにいるんだって言ったんだ」
「今、ジャズストリートに出るバンドメンバーで大阪まで移動中なんです」
「あー、茅野もなんかそんなこと言ってたな。高槻であるやつだろ」
「そうです。茅野さんも一緒で」
「じゃあ、今日LazyBirdに来るのは無理だよなあ」
「僕は明後日も出演するバンドがあって、今日はちょっと」
「お前ついてないなあ」
電話の向こう側で、マスターが唸るような声を出した。
「佑一から、お前が店に来られるか訊いてくれないかと言われたんだ。多分仕事の話じゃないかと思ったんだけどな。無理なら仕方ないよなあ」
「佑一さんってまさか!」
「前会っただろ。園原佑一だよ」
「明後日なら終わったらすぐに新幹線で帰ります!」
「それがなあ。なんか色々予定があるらしくて、今日の夜しか無理らしいんだ。予定が合わなければ諦めると言っていたから、まあそう伝えておくわ」
最初のコメントを投稿しよう!