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「マスター、僕から園原さんに連絡したいので、連絡先を教えてもらうわけにはいかないですか」
「うーん。そうだなあ。佑一の連絡先を俺から教えるのはちょっとな。返事があるかはわからんが、あいつに連絡する時に葉がそう言っていたということは伝えておくわ。それでいいか」
「はい! お願いします」
電話が切れたあと、僕は肩を落とした。トラ(代理)でも人数合わせでも、園原さんから仕事の誘いがあるなら、飛んでいきたかったのに、よりによってなんで今日なんだ。
「葉、どうしたんだ。なんかあったのか」
隣に座っていたベーシストの茅野さんが、僕の方を心配そうに見ていた。
「LazyBirdに園原さんが来るらしいんですけど、今夜予定が空いていないか、マスターから訊かれて」
「へえ、園原さんか。そんなところから声がかかるようになったなら、葉も俺のバンドをそろそろ卒業だな」
「そんなこと言わずに呼んでくださいよ。僕は茅野さんのベース好きなんで」
「嬉しいこと言ってくれるよなあ、葉は」
ちょっと照れくさそうに笑いながら。茅野さんは僕の背中をパンと叩いた。
「いや、本当にですよ。マスターにお前ついてないなって言われたのもあって、何の話だったのか気になっちゃって。なんだったんですかね」
「ああ、あれだろ多分。OVERFLOW。久しぶりに二枚目のアルバム制作に着手し始めたらしくてさ。園原さんが若手のミュージシャンに何人か声を掛けて回っているって噂だよ」
「OVERFLOW」
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