ジャズストリート

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 相変わらずアキさんは、僕と正式に付き合うことを承諾してくれない。ふたりで外に出たり、少し離れた場所ならデートらしいこともしてくれるようになったけど、ふたりでいるときには知り合いのいそうな場所には絶対に近づかないし、LazyBirdの中では変わらず店員とミュージシャンのほどほどの距離をお互いに取っている。 「頑固だな、アキさんは。僕は気にしないと言っているのに」 「私は気にするから」  毎回このやり取りだ。時々いっそのこと、LazyBirdでめちゃくちゃ親しそうに接してやろうかと思う時もあるけど、そんなことをしたら一生許してもらえなさそうな気がして躊躇してしまう。  僕らは相変わらず恋人同士ではなく、傷を埋め合うだけの関係が続いている。  マスターのことだけでもないのかもしれない。僕が会社員とかだったら違ったんだろうかと思うこともある。  外で会う時、アキさんが僕といる自分は周りからどう見えるのかなと、呟くように言ったことがあった。  僕は今更ながらに、花名が先生に対して抱いていた年齢差のコンプレックスみたいなものを理解することになった。もう少し大人だったらと思わずにいられないことが度々あったから。 「葉くん、ニューヨークにはいつから行くの」 「来月の中旬。でもすぐに帰ってくるよ」
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