カフェで待ち合わせ【ニューヨーク】

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「僕も花名のことが気になっていたひとりで、ずっと話しかけてみたいって思っていたから、同じ塾に通いだすときに口実を作って無理に話しかけました」  花名は目を見開いて僕を見た。  あの頃はずっと話しかけるチャンスを窺っていたんだよな。僕が見ていることなんて、花名は知りもしなかっただろうけど。 「最初に話しかけた日に、塾まで案内してもらったんですが、彼女が電車の中で具合が悪くなって塾まで運んだりしたから、距離が近くなったのかもしれないですね。雨に降られちゃって、彼女に風邪を引かせてしまったんですけど」 「あれは相馬くんのせいじゃ」 「先生に僕のせいだって言われたからね」  あの時、本人が自覚していたかはわからないけど、先生は明らかに僕を敵意のある目で見ていた。花名のこととなると、最初から全然余裕がないんだよな、あの人は。  なんか嫌な感じがしたんだ。せっかく花名に近づけたと思ったのに、奪い取られるように教員室から追い出されたから。  結局、気づいた時には、ふたりはもう特別な関係になってしまっていた。 「ただ朝から具合が悪かっただけだから」  花名はぼそっと恥ずかしそうに呟く。 「ふたりの想い出が色々あるっていいですね」  樫野さんはまるでテレビのコメンテーターのように、にこやかな笑みを浮かべている。 「ええ、僕にとってはいい想い出です。花名はどうかわからないですけど」 「私にとっても良い想い出だから……」  僕に合わせるように言う花名にイラっとした。  花名にとっての思い出は、先生とのことばかりのくせにと思って。 「ああ、先生に会えたからね」  花名は意地の悪い言い方をした僕にチラッと視線を送ってきた。
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