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4
その巨大なる赤の遊星が、まもなく惑星イウレアに衝突する。
それが不可避とわかったとき、惑星上の各国を覆ったのは、混乱でも騒乱でもなく、
静寂、であった。
ここ数日、奇妙な静けさが各地におりていた。
ふだんなら喧騒をきわめる北部王国同盟の首都サウルブルクの王城広場も、四百万の人口を擁する交易都市トラキアの自由市場でも、海洋国家ナクゥルの首府エヴェの港の広場でも、あるいはまた、西部辺境のオアシス都市ネフィソスの大バザールでも――
ここ数日、いつもの街の喧騒が鳴りをひそめ、どこかしら、遠く小さく、すべての物音が遠く、くぐもって、霞んだものとして聞こえている。広場に集う人々は、なかば無意識に会話のボリュームを落とし―― 市場での売り買いの呼び声も、いつもほどには高くは聞こえない。まるで惑星全体が、ゆるやかで怠惰なる休眠をはじめたかのような。無気力とまで言わないが。そこには絶望のかすかにまじった無力感のようなものが確かにあっただろう。その奇妙な静かな力が、あらゆる国々、あらゆる街の広場や通りを無音のうちに席巻した。あるいは―― 確かな絶望とは、いつもそのような形をとって、穏やかにすみやかに広く星じゅうに伝播するもの―― なのかもしれない。
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