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「四日後。われわれは飛ぶ。われわれと言うのは、わたしが統べる、この空中都市クルロワを含めた、各国連合空軍の、すべてだ。そのすべてが、四日後、ここより発って北へ飛ぶ。目指すのは、ギドの奈落。さらにその北の大地だ。そこは竜たちが統べる地と、古来より怖れられてきた。が、今は言おう。そのことは忘れろ。怖れるな。そこは誰の土地でもない。ただ、そこを。そこを目指せ。そして今回は、ただ単に賞金を懸けた競技、ではない。これは惑星の未来をかけた、全人類の、戦いであると。そのように言う。そしてそれは本当だ。そこには誇張はない」
「諸君もすでに見ただろう。いま、世界じゅうから、あらゆる国の空軍から、あらゆる国家の所属機がここへ、日々、続々と集まっている。目的は一つ。ギドの奈落の、その先へ。テラ・インコグニタと。古代の誰かは言ったらしいが―― 本当の名称は、わたしも知らん。ともかくそこへ、飛んで欲しい。もちろん「無費(ただ)で」とは言わぬ。一番にそこへたどりついた、その者には――」
赤い髪の女は、そこで言葉を一度とめ、
ひととおり、ホールに集った男らを。女たちを。
ひとりひとり、舐めるように。ゆっくりと、見回した。
その視線は、いま、ザークを射すめ、次にリーエヒルデを―― そしてそこで、視線を、しばらく止めた。口元が少し、また、笑ったようだ。
「その者には、望むだけの、金を。銀も。必要なだけ与えよう。五百億。いや。それ以上を。国庫に持てるすべてを、望まれるだけ放出する。そしてまた、譲ろう。この空中都市の全権、および、わたしが現在所持する四つの爵位のすべて。要するに。今、わたしが持つすべてを、だ」
「ではもう一度、単純に言いかえる。よいか、一番に、その奈落を超えた優秀なる飛空士よ。その者は、以降、この都市を手にするだろう。未来永劫、その者は、この都市の支配者として歴史に名を刻む。と、まあ、もちろん、その歴史とやらが、七日後以降も、続く前提での、はかない希望の話ではあるが。ま、そのような話だ。概要は今、伝えた。なにか質問はあるか?」
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