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「質問!」
いくつもの手が上がった。
最初の者が、指名も待たずに高らかに声を上げる。
「本当なのか! 都市そのものを、譲る、などと――」
「本当だ。欲しければ、いくつでも誓約書を書こう。わたしの公印を、数百の文にすべて、諸君らの目の前でことごとく押し、かつ、わたしの血をもって、そのすべてに、かさねて署名してもよい。ふふ、ま、それは冗談。とにかく本気だ。証人となるのは、ここにいる諸君、すべて。また、わたしの今この意向は、明日以降、すべての都市民に公式に伝えられる。今語ったすべてに、いっさいの嘘はない」
「質問!」
「よい。言え。何が知りたい?」
「ギドの奈落の、先。だが、そこに一体、何がある? なぜ、そこまで、その場所に?」
「良い質問だ。そうだな、それをここで今、言うべきだろう。」
女は一瞬、視線を高く―― どこか、大ホールの天井、魔法のかがり火が赤々と燃える、大天上の方を。それから視線を戻し、気だるい声で、続けた。
「極北のフロンティアの奥ふかく、人間をよせつけない竜族の地―― 古代キルトの言葉で言う所の、クシュルバルト。また、古期イリア語で言う、テラ・インコグニタ。その奥深くに、輝く結晶におおわれた未踏の大地があると言う。その、輝く結晶―― それこそが、いま、われら人類の救い主となる、その可能性を秘めた、未知の鉱石である。未知の、と。わたしは今言ったが。まったくその組成が、知られていないわけではない。かなりの精度で、推定はされている。数十人の、最高級の学者らがあつまり、そこで出した、確度の高い推定だ。われらは仮に、その結晶を、『イオ・クリスタル』と名づけた。
その大地は―― テラ・インコグニタの大部分は、その、イオ・クリスタルによって占められる。そしてそれは、地表部だけではなく―― 少なく見積もって、深さ、64ウォルの深度。あるいはそれより深い領域まで。つまり地下深くまで、その、イオ・クリスタルが構成している。つまり、大地そのものが、それで成っているのだ。」
「そして次に言う、これこそが、最も重要な部分。これが、わたしがここにすべてを賭ける、その根拠となる。つまり――」
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