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ギター③
「こんにちは。小林さん」
「やぁ~湊斗君。こんにちは。今日は買い物かい!」
「そうですね?」
なぜか疑問系で答えてしまった。というのは小林さんの驚いた表情を見て普通に答えようとしてこっちの方が疑問をもつような答え方に。
「小林さん?」
「み、湊斗君。耳かして」
「?」
小林さんの言う通りに耳を傾けると
「湊斗君~。彼女、いたんだぁ~」
「!」
「いつ、知り合ったの~」
「ち、違いますよ。渚沙は幼馴染みです」
「へぇー、渚沙ちゃんって言うんだ~。しかも幼馴染みって。やる~湊斗君」
「だから違いますって」
「照れない照れない」
ニヤニヤしながら小林さんが会計をしてくたので代金を払ってから商品を受けとる。
「あの~小林さん」
「ん?」
(まだ、ニヤニヤしてるし……)
「潤さんいます?」
「オーナー? 二階にいるよ。行ってみたら。今の時間はカウンターにいるから」
「ありがとうございます」
「今度はオーナーに紹介するの」
「違います!」
渚沙のところに戻った俺は、渚沙に二階に行くことを伝え一緒に二階へ向かう。チラッとレジのところを見ると小林さんと目があってまだ、ニヤついて顔を見て大人の余裕って言うヤツなのか俺の顔が少し暑くなるのを感じた。
(小林さん、まだニヤニヤしているし……全く。違うって言ったのに)
「湊斗。どうしたの?」
「えっ?」
「何か、顔が赤くない?」
「き、気のせいだよ」
「そう。ならいいけど?」
二階に着いた俺は早速カウンターのところへ向かった。
「こんにちは、潤さん」
「湊斗。元気そうだなぁ」
「はい。潤さんも変わらずで」
「にしてもまだ昼間だよなぁ~。サボりデートかぁ~。やるな、湊斗」
「潤さん!」
突然、潤さんまでもが小林さんと同じことを言ってくるなんて思っていなかったから、声をあげてしまった。
「こんにちは、潤さん。渚沙です」
「渚沙ちゃんかぁ~。久しぶりだね」
「はい」
「何だ、渚沙ちゃんだったのか。湊斗の影に隠れてあまり見えなかったから分からなかったよ」
「そうですか。潤さんが経営しているお店なんて知りませんでしたよ」
「驚いた?」
「はい。それはもう」
渚沙の挨拶でこれで誤解は溶けたはず……だと思う。
ここの楽器屋のオーナーである結城潤さん。昔、兄さんとバンドを組んで演奏をしていた人でギターが上手い。バントでもギターを担当していて、大人になってからは楽器屋のオーナーになった人だ。
昔よく兄さんと一緒にギターを教えてくれた人でよく遊んでもらった事も覚えているし、潤さんも俺と渚沙の事ももちろん知っている。なのにこの展開って……。
「湊斗」
「はい?」
潤さんがちょいちょいと呼んでいるポーズをしたので潤さんの近くに行き、耳をかすと
「渚沙ちゃん、可愛くなったなぁ~。付き合っていないのか、湊斗?」
「付き合っていません!」
「何だ、付き合っていないのか」
「付き合っていません! 潤さんだって知っているくせに俺と渚沙が幼馴染みって」
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